日本インテリア学会関西支部- <「竹中大工道具館」と「相楽園」見学会のご報告>
日本インテリア学会関西支部 会員各位

 

見学会報告を兼ねて。(竹中大工道具館、相楽園、2009/7/25 )

副支部長 ペリー史子(大阪産業大学)

  時々小雨の中、竹中大工道具館で始まった今年度の見学会。ここでは、目を見張るような膨大な大工道具コレクションのみならず、これらの道具を用いて加工してきた木の香りや肌触りも味わうことができ、 JASIS 会員でもある研究員の方の説明に導かれて、丁寧に見学することができた。最後には、思いがけづも昔の 槍がんなを使って実際に木を削ってみるという貴重な体験を全員させていただいた。(削れた人あり、削れなかった人あり。)

 そして、説明の中のいくつかの言葉は、印象深く私の中に残り、別の思いにまで発展していった。

 「機械での作業は熱を持つので、加工する表面が手作業とは異なる」:当然そうなのだが、指摘されるとまさにその通り。時間をかけて進める事と高速度で進める事には違いがあり、これは様々な生活場面でもあてはまる。自分の日常生活の速度も見直してみなくてと、改めて考えさせられた。

 「大工道具を使う(使える)人が減少、道具を作れる人が減少、道具の材料が減少」:同様の事は、私の好きな伝統的染織の世界にもあてはまる。糸を紡ぐ事のできる人の高齢化、後継者難等々。「すばらしい」と言われている技術を引き継いで未来につないでいきたいと切に願っているのにそのように転換できない現状とのジレンマ。何かいい方法はないのだろうかと思う。

大工道具館を回っている内に雨も上がり、次の見学先の相楽園に移動。雨後の冴えた緑の中、特別に内部公開していただいた重要文化財の旧ハッサム住宅や旧小寺家厩舎では神戸市教育委員会の方に、船屋形のある池泉回遊式日本庭園では相楽園園長さんに説明していただきながら、ゆっくりと回っていった。

旧ハッサム住宅や旧小寺家厩舎の独特の空間構成やインテリアのディテールにはとても興味深いものがある。また、日本庭園には様々な仕掛けがあり、場所毎に驚きがあるが、何と言っても、一番の感動は、滝の体験である。少し下がったところに作られた滝場に、数歩おりて行き、水に触れようとしゃがむだけで、滝の世界に浸れるのである。滝の音の聞こえ方も大きく異なり、そこだけ空気が異なるような感覚、小さい滝なのに自分の回りが滝に覆われていくような感覚に陥る。滝(対象物)と自分の位置関係によって生み出される空間デザインの一つの基本かなと、また、自分の世界に入ってしまう。

説明を聞く事で、自分達だけであれば見落としていたであろう事にも多々目を向ける事ができた。最後は、中華料理を囲った会員達の様々な意見交換で締めくくられた楽しい見学会であった。