【第1回コラム】

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2012年2月6日 【第3回コラム】 都市とインテリアについて
支部長 小宮容一(芦屋大学)

 12月20日(火)大阪デザイン振興プラザに於いて、本プラザが主催する『ODP DESIGN SEMINAR:都市を演出するー街をどこまで楽しく、心地よく演出できるかー』が開催された。私がコーディネーターを勤め、パネラーはデザイン4団体から、大森あき子(DDA*)、長町志穂 (JCD*)、ペリー史子(JID*)、川西純市(SDA*)の4氏であった。内容は各職能団体が開催する賞の2011年度受賞作品や個人のワーク、海外事例の紹介を通じて、各パネラーが今、都市と都市生活者にどう関わり、今後どう関わって行くかをディスカッションしたものであった。このディスカッションをも踏まえ、当学会高橋鷹志名誉会長(前会長)の昨年の大会特別講演テーマ「都市にインテリアは存在するか」について私見をまとめてみた。

 結論は、「都市にインテリアは存在する」或は「都市をインテリアと見ることが出来る」である。インテリア空間の概念は、一般的には床、壁、天井(屋根)に囲まれた空間とするが、必ずしもそうでないインテリア空間、例えば、桜見や野点の折、紅白の幕を張り巡らすとその内部はインテリアである。又、都市の広場に大テントが掛けられ市が開かれる、壁は無く吹き抜けであるが、まとまりのある内部空間である。従って、都市とインテリアを議論する時、屋根・天井・壁の有無については問わないことを前提としたい。

 さて、次の様な情景・行動を想像していただきたい。サラリーマンが夕方仕事を終えて駅へ向かう、オフィスビルの扉を出て、歩道に降りる。タイル張りの歩道、街路樹、街路灯、ベンチ(パソコンを打つ人がいる)、彫刻、街路の誘導標識、横断歩道と信号。オフィス街を過ぎると、ショーウインドの並ぶブランド店舗街、1本入るとアーケードの掛かった商店街がある。目的の駅前広場に着く。大理石の石畳、噴水、モニュメント、キオスク、ベンチ(語らう恋人達がいる)。夕暮れとなり広場に明かりが灯り、街路樹にイルミネーションが輝く、階段を上がり、駅の誘導サインに従って目的の電車に乗り帰路に着く。この物語は前述の4団体の職能を意識はしているが、そうでなくても都市の街路はこの類型に当て嵌まる。

 この情景の中にインテリアエレメントと共通のものを見つけることは容易である。タイル張りの床、観用植物、スタンド照明、ソファー、彫刻、各種サイン、照明計画などである。勿論、床、壁、天井(屋根)に囲まれた空間に比較して、風雨、太陽光に晒され、重歩行の街路では、設計のスペック、素材の選択は異なる。しかし、エレメントの種類としては共通である。又、街路の計画に於いて、インテリア計画で行う動線計画、視線計画、人間工学、ユニバーサルデザインなど共通の手法が存在する。都市計画は大所から都市機能や人間をグロスで捉えて計画するのに対して、インテリア計画はミニマムな1人の人間から始まり、2人、3人と次第に増やしながら計画していく。スタンスの違いである。20世紀の都市が機能や効率を求めたのに対して、21世紀は安全・安心は基より楽しい・心地よいといった人間と人間の感性を中心に据えた都市が求められている。ここに於いて「都市をインテリアと見る」立場から、都市を計画・設計する必然性があり、そういう時代が来たと云えるのである。

 インテリア学が構築してきた学術・技術をアーバンデザインに生かすべき時であると共に 更なるインテリア学の向上のために研鑽の必要を感じるところである。

擱筆

*(注)DDA:(社)日本ディスプレイ協会、JCD:(社)日本商環境協会、JID:(社)日本インテリアデザイナー協会、SDA:(社)日本サインデザイン協会